
仕事に集中する席、同僚と話すカウンター、ひと息つくラウンジ。その間を行き来しながら働くオフィスが、中国・上海に誕生した。イトーキは10月16日、「ITOKI DESIGN HOUSE SHANGHAI」を開設したと発表した。家具を並べて紹介するだけでなく、社員が実際に働く場を公開し、空間の使い方まで伝える「ワーキングショールーム」だ。
場所は徐家匯商業地区の上海港匯センター2号館45階。日本の家具メーカーが中国で何を売るのかという事業の変化とともに、これからの職場をどう設計するかを考える事例となる。
家具の選定から、働き方の相談まで
イトーキはこれまで、中国系企業や日系企業に向けたオフィス家具の製造・販売を中心に中国事業を展開してきた。新拠点では、企業の働き方や組織上の課題を把握し、コンサルティング、空間デザイン、施工、利用開始後の改善までをまとめて提案する。
同社は、製品販売を中心とする事業を「Office 1.0」、空間を通じた課題解決を「Office 2.0」と整理している。日本ではさらに、データやAIを用いるオフィスDXを「Office 3.0」と位置付ける。今回の上海拠点が担うのは、中国での事業を家具中心からワークスタイルデザインへ広げる役割だ。
背景として同社が挙げるのは、働く環境を人材の獲得や定着、組織づくりにつなげたいという企業の需要である。家具、設計、施工を別々に発注する場合に比べ、提案の軸をそろえやすくする狙いがある。ただし、実際の提供内容は案件によって異なり、ライセンス要件などによりサービスごとに契約先が分かれる場合もある。
「集中・交流・休息」を一本の動線でつなぐ
空間のテーマは「CROSSOVER」。設計に先立ち、現地の経営層への聞き取り、社員アンケート、ワークショップを行い、職場の課題を洗い出した。そのうえで、集中する場所、人と交流する場所、休息する場所を連続的につなぐ構成を採用した。
象徴となるのが、入口から執務エリアへ延びる「THE LINE」だ。通路、ハイカウンター、デスク、ベンチを一続きに配置し、仕事やカフェ利用、短い会話に対応する。大型ディスプレイの前は社内外のイベントにも使える。通り抜けるだけの場所にも、立ち止まって話したり作業したりする役割を持たせている。
窓際には45階の眺望を生かした集中席を設け、上下昇降デスクを導入した。対話やオンライン参加者を交えた会議など、業務の内容に合わせて場所を選べるようにする。上海で実際に使われていたレンガを再利用し、会議室名にも市内の地域名を取り入れた。日本での経験を持ち込みながら、現地の街とのつながりも設計に反映している。
22人が働く場所に、用途の異なる154席
新拠点の面積は1178.51平方メートルで、移転前の721平方メートルから拡大した。在籍人数は22人、席数は154席。このうち136席が、仕事内容に応じて場所を選ぶActivity Based Workingに対応する。社員数と席数の違いからも、一人一つの固定席を並べるだけの構成ではないことが分かる。
上海のワークプレイス事業を担うNovo Workstyleのオフィスを移転し、イトーキブランドで運営する。来訪者は家具の形や素材に加え、社員がどう使い、どのように日々の運用につなげているかを見学できる。空間の写真だけでは分かりにくい、働く人と場所の関係を伝える仕組みだ。
日本の経験を生かし、現地で実践する
イトーキは1890年創業。家具の製造販売に加え、空間設計や働き方の相談、オフィスデータ分析などに事業を広げている。日本の自社オフィスでも、2018年末の拠点集約後、働き方の変化に合わせた大規模改修を1~2年に一度行ってきたという。
上海でも、まず自社で新しい働き方を実践し、その経験を顧客への提案に生かす方針だ。若い世代が就職先の環境を見る際にも、内装の美しさに加え、集中と協働の両方に対応できるかという視点を提供している。なお、今回の拠点開設そのものが、生産性向上などの成果を実証したという発表ではない。
見学対象は法人。希望する場合は、現地企業の問い合わせ窓口で受け付け条件や日程を確認してください。
多元ニュース編集部/2026年10月19日
出典:株式会社イトーキ発表(PR TIMES、2026年10月16日)



