数千年前の岩絵をどう読む? 雲南の年代研究と広西・花山の世界遺産

広西の花山に残る赤い人物や円形の岩絵
花山の岩絵。2010年12月27日撮影。Rolfmueller/Wikimedia Commons、CC BY-SA 3.0。配信元の縮小版。

中国新聞社の研究者インタビューを入口に、芒関遺跡の年代測定と、広西の世界遺産・左江花山を紹介。古い絵を調べ、風景とともに守る仕事に注目します。

次々に画像が流れるスマートフォンの画面から、数千年前の岩壁へ目を向けると、絵を見る時間の感覚が変わる。中国新聞社は10月6日、雲南省文物考古研究所の研究者・呉沄氏に、先史時代の岩画を読み解く意義を聞いた。雲南省の芒関遺跡で進む年代研究と、広西の世界遺産・左江花山の岩絵を手がかりに、人が絵を残す行為と、それを今に伝える仕事を紹介する。

広西の花山に残る赤い人物や円形の岩絵
広西・花山の岩絵の一部。2010年12月27日撮影の資料写真で、雲南・芒関遺跡の写真ではありません。Rolfmueller/Wikimedia Commons、CC BY-SA 3.0。配信元の縮小版を使用。

古い絵を、現代の自分との接点から見る

中国新聞網掲載のインタビューは、中国新聞社の繆超記者による取材だ。呉氏は、手形や幾世代にもわたる描き重ねに注目し、古代の人が存在を示そうとした行為に、現代人とも通じる感覚を見いだしている。これは研究者の解釈であり、すべての図像の意味が確定したという説明ではない。画像を速く消費する今日だからこそ、描く身体や長い時間を考える材料になるという問題提起だ。

約4200年前の絵と、どう確かめるのか

関連する研究は、考古学誌Journal of Archaeological Science: Reportsの論文で確認できる。研究チームは芒関の図像を覆う炭酸塩の堆積物をウラン・トリウム法で測定した。顔料そのものを直接測るのでなく、絵の上に後からできた物質の年代から、絵がそれ以前に存在したことを確かめる方法である。

論文の要旨によると、人の図像に対応する試料から最も古い年代が得られ、少なくとも約4220年前には具象的な岩画があったと判断した。「約4220年前」は制作年を一点に決めた数字ではなく、最低限さかのぼれる古さを示す。図柄の似かよいだけに頼らず、測定可能な物質と絵の重なりを合わせて考えることに、この研究の意味がある。

花山では、岩絵と川の風景を一緒に読む

中国南部の岩画を知るもう一つの入口が、広西チワン族自治区の「左江花山の岩絵の文化的景観」だ。雲南の芒関とは別の地域・遺跡で、2016年にユネスコ世界遺産に登録された。ユネスコの解説によると、38の岩絵の地点と、それを取り巻くカルスト地形、川、台地を組み合わせた文化的景観として評価されている。

岩絵はおおむね紀元前5世紀から紀元後2世紀に位置づけられ、駱越の人々の生活や儀礼を伝えるものとされる。図像には銅鼓に関わる要素があり、中国南部に広がっていた銅鼓文化を理解する証拠として重要だという。人物の形だけを切り取って見るより、どの川に面した崖に、どのように絵が残っているかまで見ると、世界遺産が「景観」を含む理由が分かる。

写真でも、両腕を上げたような人物や円形の図像が、岩肌の凹凸の上に並んでいることが分かる。線の形を現代のイラストと比べるのは鑑賞の入口になるが、似て見えることと、同じ意味で描かれたことは別である。描かれた対象、年代、周囲の地形という複数の手がかりを行き来する楽しさがある。

大学で美術や考古学を学ぶ人にとっては、同じ図像を複数の分野から調べる過程も興味深い。形を観察する仕事、測定結果を読む仕事、川や崖との位置関係を記録する仕事。それぞれの資料が答えられる問いを分けることで、古い絵をめぐる説明の確かさを考えられる。

保存の対象は絵だけではない

ユネスコが公表する中国側の2022年の保全状況報告書概要は、岩絵の補強・保護事業とともに、鉱物顔料やその由来の研究、関連資料の刊行を挙げている。市と県・区の管理体制、保護に関する規則も整えてきたと報告する。これは当時の保全報告であり、現在すべての作業が完了したことを意味するものではない。

描かれた岩を守る作業と、顔料を調べ、記録をつくる作業はつながっている。傷みが進んだ後では失われる情報もあるため、調査記録を残すこと自体が、将来の研究の条件になる。鑑賞する側も、絵の鮮やかさだけでなく、その色や形を伝えるためにどんな調査が必要なのかという視点を持つと、展示解説の読み方が変わる。

一枚の岩絵には、見る楽しさと、まだ答えの出ていない問いが同居する。芒関では科学的な年代測定が時間の手がかりを与え、花山では風景や儀礼との関係が解釈を広げている。二つを同じ遺跡として扱わず、それぞれの資料を比べることが、中国の岩画の多様さに触れる第一歩になる。

多元ニュース編集部。中国新聞社の2026年10月6日付取材記事を入口に、研究論文とユネスコ資料を加えて構成。

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