俳優の益岡徹さんが、日本中国文化交流協会編集の『日中文化交流』第967号(2026年9月1日付)に寄稿し、同年2月から3月に出演した舞台「大地の子」を振り返った。主人公の実父・松本耕次を演じた経験を通じ、師である仲代達矢さんから受け継いだ演劇への姿勢と、戦争の記憶を次世代へ伝える思いをつづっている。

「大地の子」で向き合った父の役
山崎豊子さんの長編小説「大地の子」は、旧満州で中国残留孤児となった少年・陸一心の波乱に満ちた人生を描く作品。益岡さんは寄稿で、中国の人々の情愛に支えられて生きた日本人の物語として、その歴史を後世に伝える意義に触れた。
また、1995年に放送されたNHKの日中共同制作ドラマにも言及。陸一心を演じた上川隆也さんや、中国の養父・陸徳志役の朱旭さん、実父・松本耕次役の仲代さんの演技が、強く心に残っていると振り返った。
仲代達矢さんから受け継いだもの
仲代さんは、益岡さんにとって無名塾時代の師であり、父のような存在でもあったという。今回、かつて仲代さんが演じた松本耕次を自ら舞台で担ったことに、不思議な縁を感じながら役に臨んだと記している。
寄稿では、仲代さんが自身の東京・山手空襲の体験を語った際の記憶も紹介した。戦争の悲惨さを繰り返してはならないという思いを、言葉だけでなく演劇人としての生き方からも受け取ってきたとし、その遺志を継いでいく決意を示した。
文化交流を通じ、歴史を伝える
益岡さんは日中関係にも目を向け、国交正常化の経緯を記憶し、学ぶ必要性を訴えた。さらに、舞台上演前に早稲田大学演劇博物館で観覧した「日中演劇交流展」に触れ、先人たちの交流の積み重ねを振り返り、互いの素顔に接する機会の大切さを再認識したとつづった。
舞台で一人の父を演じる経験は、師から受け継いだ記憶と向き合う機会にもなった。益岡さんの寄稿は、演劇と文化交流を通じて歴史を伝え、人と人との理解を深めていく思いを伝えている。
出典:日本中国文化交流協会編集『日中文化交流』第967号(2026年9月1日付)1面、益岡徹「『大地の子』―仲代達矢さんから受け継いだもの」。提供された紙面写真をもとに、多元ニュースが要約・再構成。



